山開きの日に

2024年7月10日。11回目の富士登山。

ここ数年、私の登山好きが知れ渡り、いろいろな人から「富士山に連れて行って。」と頼まれるようになった。3月に10人のメンバーが集まり、日程の調整をしたところ、全員が参加できる日は7月10日〜11日しか無かった。静岡県側の登山ルート「富士宮ルート」の山開きの日である。

最初10人いたメンバーも、日が経つにつれキャンセルが出て、最終的に4人の山行となった。

富士宮駅から五合目登山口までバスで行くのだが、登山シーズン最初の3日間はバスの本数が少ない。
午前中は8:15発の1本しか無かった。東京都在住の聖子ちゃんは、始発に乗っても間に合わないということで、前夜、私の家に泊まった。2人で朝食のフルーツヨーグルトを食べて、5時に家を出発。鶴間駅から始発電車に乗った。

藤沢駅の改札で、もう一人のメンバー美恵子ちゃんが合流。3人で東海道線に乗り、富士宮駅へ向かう。8:04に富士宮駅に到着。バス停に行くと長蛇の列ができていた。こんなに大勢、1台のバスに乗れるのだろうか?

列に近づくと、もう一人のメンバーみぞっちさんが手を振っていた。彼は名古屋在住で、昨日、新幹線でこちらに来て、富士宮駅近くのホテルに宿泊していた。みぞっちさんは、私達の到着時刻を知っていたので、その少し前にバス停に来たようだった。最後尾の5人位前に並んでいた。

8:10頃、行列が前に進みだした。乗車が開始したのだ。バスは2台停まっていたが、100人近くが並んでいた。全員座るのは無理だろう。私達がバスに乗った時、すでに空席は無かった。これから五合目まで約80分、立って乗らねばならない。
過酷な登山をする前に、80分もバスに立って乗るのはかなりキツイ。標高2,400mの登山口へ向かう道は、ヘアピンカーブが連続している。その急カーブに立って耐えるには、かなりの体力を消耗するのだ。
とは言え、次のバスは4時間40分後である。そんなに待つわけには行かない。このバスに乗るしか無いのだ。

出発して5分。バスは富士山本宮浅間大社の大鳥居前に停まった。たくさんの人が手を振ったり、拍手したりして、登山者を乗せたバスを歓迎してくれた。テレビカメラが10台ほど並んでいた。今日は山開きの日。浅間大社で開山祭があるのだ。毎年ニュースに取り上げられるのだった。

SI1

登山客がバスを降りると、出口前でカメラが待ち構えていた。私は笑顔でカメラに手を振って、バスを降りた。太鼓と笛の軽快な祭り囃子が聴こえていた。私達は近づいて行って、演奏を聴いた。

演奏が終わると、男性が声を掛けてきた。
「これから開山祭をするのですが、どなたかお一人、登山者代表として、前に出ていただけませんか?」
「それなら、みかりんがいいです。」と、美恵子ちゃんと聖子ちゃんが私を差し出した。
「登山者代表として、前に出ていただけますか?」
「はい。もちろんです。」
「それでは、出番になったら声を掛けますね。」
こんな風にして、突然の大役を任された。

富士急バスの社長さんが挨拶をしたあと、「出番です。前に出てください。」と言われ、何をするかも良くわからないまま前に出た。私ひとりではなく、私の左に男性、右に女性が来て、3人で前に立った。神主さんから榊(さかき)が手渡された。神主さんがお清めをしたあと、「そこの台に置いてください。」と言われて、榊を台の上に置いた。

次に神主さんは、お祭りの客とバスをお清めした。
続いて、富士宮市長が開山宣言をした。
その後、また「前に出てください。」と言われて、前に出た。今度は紙袋を手渡された。その中には「表口富士開山 富士山お山開き」と書かれた手ぬぐいが入っていた。

Screenshot

お祭りが終わり、乗客がバスに乗る時、私は入り口に立って、乗客一人一人に手ぬぐいを手渡した。

4人で記念撮影

10:00 バスが五合目に到着。登山靴に履き替えて、登山開始。
少し歩いたところで、入山料を支払うのだが、いつにも増して人だかりができていた。入山料の1,000円を支払うと「事前登録はされましたか?」と聞かれた。
「登山届なら出しました。」と答えると「登山届とは別に、事前登録が必要になったんです。」とのこと。
え?!静岡県警に提出する登山届と、登山届専用アプリ「コンパス」と2つも登山届を提出したのに、更に届け出が必要だと言うのか?

奥のプレハブ小屋に案内され、注意事項の動画を観てくださいと言われる。その後QRコードを読み取り、事前登録をしてくださいとのことだった。しかし、QRコードを読み取っても、電波が悪く、どんなに待っても何も表示されなかった。係の人に「何も表示されないんですけど。」と言うと、「では、用紙に記入してください。」とのこと。用紙に名前、住所、宿泊する山小屋の名称などを記入して提出した。この手続きに15分くらいかかっただろうか?全く。登山者にとって命にも関わる貴重な時間を、こんな無駄な手続きに使わせるとは。普段おだやかな私も「なんでこんなことしなきゃいけないの?」と文句が出た。

プレハブ小屋を出ると、美恵子ちゃんが「毎日新聞の人が取材したいって。」と言う。毎日新聞の取材?さっきは開山祭でテレビカメラに映っちゃったし、今度は新聞にも載っちゃうのかな?
毎日新聞の取材は「今年から事前登録が必要になったことを知っていましたか?」という物だった。「全然知らなかったです。」と答える。
「山梨県側で規制が厳しくなったことはご存知でしたか?」
「それは、良く知っています。入山料が2,000円高くなり、人数制限ができて、時間制限もできて、時間外はゲートを閉めて、登山者が遅い時間に入れないようにしたんですよね。」
10分くらい質問に答えたあと、最後に名前を聞かれた。私はすかさず「昨年、キリマンジャロに登って登山記を出版したんですよ。本宮美香で検索したら出てきますよ。」と宣伝した。
写真も撮ってくれた。(後日、毎日新聞の7月10日の記事を確認したが、私達の写真は載っていなかった。)

五合目2,400mの標識の前で写真を撮りたかったが、小学生の団体がいて、なかなか写真を撮れなかった。3分くらい待って、ようやく写真を撮る。

記念撮影

この記念写真を撮ったのが10:50。登山開始してから45分が経過していた。昨年までなら、ここまで5分もかからなかった。予定時間を大幅にオーバーしてしまった。

11:10 六合目に到着。宝永山荘に入り、昼食を食べた。私はあたたかいスープが飲みたかったので、ラーメン700円にした。

SI1

11:50 六合目を出発。この時はまだ、良く晴れていた。